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わたしを見ないで
第3章 まさかの再会
「八田先生、今日は学校お休みなんですか?」  


 
 2人でエレベーターに乗り込んですぐ。
【風俗嬢のみるくちゃん】がそんなことを突然言い出したんだから、八田先生は相当驚いたと思う。


「えっ?」


 先生は一瞬目を丸くして…すぐに綺麗な顔面をキッと陰険そうに歪めて


「なんのこと?」


 と、シラをきった。
 大嫌いだったかつての担任が、冷静を装いながらも顔に焦りの表情を滲ませているのは愉快でたまらなかった。


「とぼけたってだめだよ先生。
 西原晴香って覚えてるでしょ?
 先生のクラスだった子」


 わたしはあのときの仕返しをしようと思って、八田先生にわざとお姉ちゃんの名前を言ってやった。
 八田先生は険しい顔で少し考えてから、



「…西原?学区内トップの高校に行った、生徒会長の?」



 と、意外にも素直に聞き返してきた。
 誤魔化しきれないと思ったのだろうか。
 八田先生は案の定、お姉ちゃんのことは覚えていた。
 なぜならわたしの2つ年上のお姉ちゃんは、
 わたしと違ってすごく美人で、とても優秀な生徒だったんだから。


「そうだよ。じゃあ、わたしは誰でしょう?」


 エレベーターが1階に到着しても、先生は答えられなかった。


「フー。やっぱり覚えてないよね。
 わたしは、西原晴香の妹。
 西原優里花。
 わたしも先生のクラスだったんだけど?
 わからない?」

「妹?
 西原優里花…?
 優里花、ゆりか、ユリカ…?」


 先生はホテルに向かって歩き始めてもなお、私を思い出せなかった。
 余計に腹が立つ。



 
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