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月の姫~夢占(ゆめうら)の花嫁~
第38章 第五話【月の姫~夢占(ゆめうら)の花嫁~】
*********(本文から抜粋)
明華の眼に大粒の涙が溢れた。
「殿下の進まれる道の邪魔にはなりたくなかったからです」
「何故、そのような話になる! 私がそなたを邪魔だなどと一度でも申したか」
明華の眼から堪えきれなかった涙がしたたり落ちる。
「王妃になりたくないという私の気持ちは、今も変わってはおりません。王妃になれないということは、殿下のお側で生きられないというのと同じです。ゆえに、私は自ら身を引きました」
ヨンが思い詰めた声で言った。
「仮に私が王でなければ、そなたは私と生きる道を選んだというのか」
明華はしゃくり上げながら言った。
「殿下は生まれたときから、王になるべきお方です。もし王でなければという話はあり得ません。そうではありませんか」
「私は王位を捨てる。さすれば、明華を私の妻にできるのだろう?」
そういう問題ではないのだ。明華は驚愕と怖れにおののきながら、懸命に言葉を紡いだ。
「殿下はいつか仰せだったではありませんか。自分の肩にはこの国の民と国のゆく末がかかっているから、ご自分が王でなくなることはあり得ないと」
(中略)
王の責務を投げ出すことはできないと、かつて彼は明華に断言したのだ。あの言葉をあっさりと覆し、彼は王座を降りるというのか。
「たかだか女ひとりのために、道を見失われてはなりません。心からのお願いです。どうか、王としての道をまっとうして下さいませ」
ヨンが声を荒げた。
「たかだかだなどと言うな。明華は私にとっては、たった一人の女だ。特別な女なのだ。そなたを諦めることなどできぬ」
明華の眼に大粒の涙が溢れた。
「殿下の進まれる道の邪魔にはなりたくなかったからです」
「何故、そのような話になる! 私がそなたを邪魔だなどと一度でも申したか」
明華の眼から堪えきれなかった涙がしたたり落ちる。
「王妃になりたくないという私の気持ちは、今も変わってはおりません。王妃になれないということは、殿下のお側で生きられないというのと同じです。ゆえに、私は自ら身を引きました」
ヨンが思い詰めた声で言った。
「仮に私が王でなければ、そなたは私と生きる道を選んだというのか」
明華はしゃくり上げながら言った。
「殿下は生まれたときから、王になるべきお方です。もし王でなければという話はあり得ません。そうではありませんか」
「私は王位を捨てる。さすれば、明華を私の妻にできるのだろう?」
そういう問題ではないのだ。明華は驚愕と怖れにおののきながら、懸命に言葉を紡いだ。
「殿下はいつか仰せだったではありませんか。自分の肩にはこの国の民と国のゆく末がかかっているから、ご自分が王でなくなることはあり得ないと」
(中略)
王の責務を投げ出すことはできないと、かつて彼は明華に断言したのだ。あの言葉をあっさりと覆し、彼は王座を降りるというのか。
「たかだか女ひとりのために、道を見失われてはなりません。心からのお願いです。どうか、王としての道をまっとうして下さいませ」
ヨンが声を荒げた。
「たかだかだなどと言うな。明華は私にとっては、たった一人の女だ。特別な女なのだ。そなたを諦めることなどできぬ」