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† 姫と剣 †
第5章 来賓
宮殿前、ローハーグの用意した馬車の前、リューイは自身の馬を手で引きながらルシアを待つ。
「さすがローハーグ…馬車の作りもアノアとは違うな」
どこからともなく現れたロイを、リューイは横目で見つめる。
その様子を見てロイはハハと笑った。
「本当に、君は俺のことが気に入らないみたいだね」
「当たり前だ」
冷たく言い放ったリューイにロイは近付く。
「君の気持ちは報われることはない。わかっているだろう?」
「……言っている意味がわからんな」
「君は騎士で、姫は……『姫』だ」
「………」
「一生とぼけるつもりなら、それで構わないけどな」
リューイは軽く目を見開くと、ロイに向き直る。
二人は、きつく睨み合うようにして顔を合わせた。
「俺は、必ず姫を妃にする。それでもお前は、耐えられるのか?」
「………勘違いするな。俺の仕事は姫を守ること。姫が誰とご結婚されようがそれは変わらない」
「そう…か。本当君はやっかいだよ」
ふんと息を吐いたロイは、長い黒髪をかき上げて、リューイから視線を外す。
遠くから、支度を終えたルシアがこちらへ向かって歩いているのが見えて、その様子を眺める。
「やりづらいったらありゃしない」
「何が言いたい」
「君みたいな、はっきりしない相手がライバルだとやりづらい、と言っているんだ」
「……」
「明らかに敵でも、その敵が戦場に現れない限りは戦えない…だろう。君はそれ、だよ」
そう言いながら、ルシアに向けて笑顔を見せているロイの横顔をリューイはしばらく見ていた。