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† 姫と剣 †
第5章 来賓
雑な気遣いにロイは頭を掻く。
「…分かりました。姫も、それでよいですね?」
ロイに尋ねられて、ルシアは黙って頷くと、その二人の様子をみてアノア王は息子の耳元に近付く。
「ロイ、しっかりやるんだぞ」
「わざとらしい気遣いをどうも」
「女の心を掴むのは簡単じゃないぞ」
ニヤニヤしている父親を見て、ロイは片眉を上げて距離を離す。
「公務が詰まっていらっしゃるんですよね?」
「そうだったそうだった」
ハハハと豪快に笑ったアノア国王は、ローハーグ王深く頭を下げる。
「では、失礼いたします。本日はお時間いただきありがとうございます」
ルシアを捉えたアノア国王は、パチリとウインクを投げる。
「では、ルシア姫、アノアで会いましょう」
「え、ええ」
陽気な王に、ルシアも思わず笑顔になる。
変わった人だ。
見た目はロイと似ているが、性格は異なるようだ。
「ご無礼をお許し下さい」
父の背中を見ながら、ロイがため息まじりにそういうのをルシアは首を振って否定する。
「無礼だなんて、楽しいお方ですね」
「恥ずかしい限りです…」
今まで見せたことのないロイの表情に、ルシアは少し拍子抜けした。
まだ彼を知らないというのは、本当だ。
あまり得意なタイプではないと思っていたが、もっと心を開いてみるのは悪いことではない気がした。
「では、用意が済みましたら、私たちも向かいましょう」
「……はい」
素直に返事をしたルシアは、そのままその部屋を後にして、旅の支度を始めた。