この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
いつものような妖しさはない、純粋な笑顔。
────────── 祖国でありのままのロイと心ゆくまでお過ごしください
出発前にアノア国王が言っていたことが少しだけ分かる気がした。
自国の民に慕われている。
それに、ロイ自身も民のことを想っているように見える。
街を抜け、振っていた手を下ろしたロイは、ルシアからの視線を感じて、向き直る。
「あなたに見つめられると照れますね」
「……とても…慕われていらっしゃるんですね」
「昔からよく街には行っていたので」
「そうなんですね」
少しだけ哀愁の漂うルシアの言葉にロイは窓のへりに肘をかけ、頬杖をつく。
ローハーグは、先日の成人の儀までルシアを宮殿の中へ隠すように閉じ込めていたと噂されている。
昔から街を出入りしていたロイには想像の付かないその生活。
街を抜けて斜面を登った辺りで、馬車が止まるとルシアは窓の外を再び見上げた。
異国情緒漂うその宮殿の出立ちが門の奥に少しだけ垣間見える。
門がゆっくりと開くと、きらびやかな噴水が目に入る。
そして、中へ進むとすぐに馬車は停車した。
「姫、着きました」
「ええ…」
馬を降りたリューイが馬車の扉を開けると、ルシアはゆっくりと馬車から降りた。