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† 姫と剣 †
第6章 アノア王国
異国の地に初めて足を踏み入れるという感動を噛み締め、その地に立ち、ルシアは目の前の宮殿を噴水越しに見つめた。
ローハーグの宮殿ほどの大きさはないが、やはり色彩が豊かでかつちょっとした装飾の細部がとても繊細で、目を奪われる美しさがある。
住むための場所というより、美術品のような印象が強い。
「美しいですね……」
目を奪われるルシアの後ろにもう一台の馬車が到着する。
ルシアの付き人として付いてきたマヤとアマンダが、その馬車から降りると、同じく宮殿を見て興奮した様子で声を上げていた。
ルシアの手を、ロイはさりげなく掴むとそのままルシアを中へと誘う。
その間、両脇には出迎えの使いたちが深く頭を下げルシアの来国を出迎えていた。
「長旅でお疲れでしょう。今日はゆっくりとお休みください」
「………ありがとう…ございます」
アノアを訪ねると決まってから、ルシアはロイが纏う柔らかさに正直少し戸惑っていた。
今まで抱いていた印象と異なるのだ。
どれが本当なのか。
どうしても、あの日無理に攫おうとした強引なロイが忘れられず、体が勝手に警戒してしまう。
「その人がルシア姫ー?」
不意に背後から聞こえてきた声に、ルシアは首を傾げながら背後をみる。
リューイは警戒しながらルシアとの距離を詰め、盾に手をかけた。