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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
照りつける太陽─────
人々の往来─────
笑い声が何処からともなく聞こえてくる中で砂埃が舞う。
大きな布を頭から被り、首に巻いた女2人は、ひんやりとした土壁を掴んで街の様子を伺っていた。
「すごい………」
「王宮の中の方が何倍もすごいんですけどね……」
呆れた様子でハハハと笑う女に、もう一方の女は勢いよく振り返る。
「早く行きたいわね、マヤ…!」
勢い余って振り返ったせいで、首元の布がはらりとはだける。
それにマヤ、と呼ばれた女は目を見開いた。
「ちょ、ちょっと…ルシアさまっ…!お顔が!もっと隠してっ…!」
マヤは、慌てながら、ルシアの首元の布を正してルシアの口元を隠す。
「これくらい大丈夫よ。私の顔を知ってる人なんていないんだから」
「そ、それはそうですけど……! 万が一ということがありますから! 私も命懸けなんですから、もう少し気を遣ってくださいませ…っ」
青ざめるマヤをルシアは横目で見つめて、うーんと唸ったあと、すぐに街の様子に再び目を向けた。
布の端からルシアの金色の髪がはみ出て、光る。
興奮を抑えきれないのか深緑の瞳がキラキラと輝いていた。