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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
目をキラキラとさせているルシアとは裏腹、気が気じゃないマヤは、顔を上げて太陽の位置を見る。
「ルシアさま、もう満足されました? そろそろ王宮へ……」
「だめよ! 街の図書館に行くのが目的なんだから!」
「そんな……っ。何度も申し上げておりますが、この国で1番大きな図書館は王宮にあるのですよ!?」
分かってるわ、と言いながら、ルシアが壁の影から出た。
そしてくるりと振り返ってマヤを見る。
その反動でマヤが先程直した布がまたはだけて、顔が露わになった。
「王宮の本は検閲が通ったものしかないでしょ? それにもうほとんど読んでしまったから、新しいものが読みたいの」
微笑みがマヤは向けられる。
太陽の下、その笑みはいつも以上に眩しい。
このお方は聡明なだけではなく、人を惹きつける力がある。
生まれながらの王族。
彼女の名はルシア=ウェルズ=ローハーグ────
このローハーグ王国の姫である。
「さ、行きましょう!」
こうなったら彼女を止めることなどできないのは、お付きの侍女であるマヤがよく分かっている。
はぁ…と観念したようにため息をついたマヤは、スタスタと向かってしまうルシアの後を懸命に追っていた。