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† 姫と剣 †
第8章 刺客
扉が閉まったのを確認したリューイは、ルシアに居直る。
「ひと払いなど……いかがいたしましたか」
「リューイ……」
深緑の瞳に吸い込まれそうな感覚に陥ってリューイは、瞬きをする。
「いい加減……教えて?」
「…………………」
「死ぬかもしれないって……思ったあの時、やっぱりもっとリューイから過去のこと、聞いておくんだったって…それだけが後悔だった」
まだ迷いを見せるリューイに、「だから」と言葉を続けてルシアは力強い視線を送る。
「お願い。教えて」
「──────…」
切なげに揺れる、リューイの明るく茶色い瞳。
「どんな過去でも…受け入れるから」
「……ですが…」
「こんなに何も覚えていないんだもの。きっとすごくショックな出来事があったんでしょう?」
知識の豊富なルシアであるからこそ、大体見当がついている。
『解離性健忘』
きっと過去のショックな出来事をきっかけに、記憶が仕舞い込まれて…──────
「覚悟は出来ているから」
息を吸ったリューイは、そのままゆっくりとそれを吐き出す。
「あなたに記憶がないのには、ちゃんと理由があります」
ようやく口を開いたリューイに、ルシアは微笑む。
「………教えて」
依然として握られた手。
そこにリューイは視線を落とし、「ご存知ですか……?」と言葉を続けた。