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† 姫と剣 †
第9章 記憶
「ご存知ですか……」
「………………」
「ローハーグの宮殿裏奥の森には、凶暴な生き物と────」
「──────魔女がいる、でしょ? もちろん知ってるわ」
リューイの言葉を遮ると、ルシアは続けて「んん」と唸る。
「でも、そんなの嘘でしょ? 魔女だなんてそんな」
「いいえ。魔女は存在します」
言い切ったリューイに、ルシアは目を見開いた。
何度も父上から聞いた言葉だったが、子供騙しだと思っていた。
何か森の中に見られたら困るものがあるから、寄せ付けないための適当な言葉なのでは、と……
「言い切るけど……あなたは見たの……?」
ルシアは疑いの目をリューイに向ける。
そして、リューイの瞳が揺れたのを見て、ルシアはハッとしてベッドから体を起こした。
「見たのねっ………それはいつ…?」
「姫、傷が開きます…!」
リューイの腕を掴みながら、ルシアはゆっくりと体を起こすと、リューイが顔を覗き込んだ。
「ねぇ、リューイ、教えて。それが私に記憶がないことと関係があるの…?」
賢明なルシアの姿に、リューイは、グッと歯を食いしばった後、はぁと肩を落とした。