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† 姫と剣 †
第9章 記憶
「昔、父が王妃様の……つまりは姫の母君の護衛をしていた時、私もよくローハーグの宮殿に出入りしていました」
「あなたのお父様が……」
ランドルト家は昔から近衛の家系。
リューイの父がルシアの母の護衛をしていたのは聞いていた話だった。
「私は姫と良くご一緒させていただいていました」
「ご一緒って…? 遊んでたってこと…?」
「…………まぁ、そうですね……」
少ししどろもどろなリューイに、ルシアは緩く笑う。
しかし、すぐにリューイの顔が曇ったのが分かった。
「そして、ある年の母の日、姫と私は森の中へ」
「森の中へ?」
「えぇ」
目を伏せたリューイは、声をトーンを下げる。
「……………私が………行きたいと言ったのです。森の奥にしか咲いていないと言われる花を……母に渡すため」
少し、いつもと違った雰囲気を纏うリューイを、ルシアは注意深く見つめる。
母の日のための花。
そのために、禁じられた森の中へ…
「森の中に入ってしばらくすると、見たこともないほど大きな狼が数匹、姫と私を囲いました」
奥の森には……
「凶暴な生き物って……狼のことだったのね…。まさか本当にいるなんて…」
「今の私なら、倒すことが出来ますが…。あの時はまだ幼く、弱かった」
はぁ…とため息をついたリューイは、片手で頭を抱えた。
「怖くて何もできない私とは裏腹に、あなたは昔から勇敢で…」
「………どういうこと…?」
「敵うはずもないのに…あなたは私を庇って……そして、怪我をしました……っ」
そう言いながら、リューイは、包帯の巻かれたルシアの見つめた。