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† 姫と剣 †
第9章 記憶
「まぁ、だが……」
そう言いながら、頭をかいたリューイをロイはじっと見つめる。
「ここまで話してしまったのだ。姫を止めることは出来ないだろうな」
諦めた様子にリューイに、ロイも同調する。
あのルシアのことだ。
リューイの言う通り、このままじっとしている、というタイプではない。
そして、ロイは肩を落として何やら覚悟したようにして窓の外の月を見上げる。
「………こういう気持ちは、初めてだ」
ロイの言いたいことが分からず、リューイは首を傾げる。
月から、その青い瞳をリューイに再び向けたロイの切ない表情に、リューイはハッと息を飲んだ。
月明かりを浴びる一国の王子。
男ながらにして、美しいと言われるのは納得ができる。
「姫はきっともう心を決められている」
「………と、いうと…?」
「まったく…俺に言わせるな」
呆れた様子のロイはそのままその場を後にする。
「あと少し……だったのだがな」
「だから何が…────」
「────リューイ、あとはお前次第だ」
リューイはロイの言っていることを飲み込めぬまま、その背中を見つめていた。