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† 姫と剣 †
第9章 記憶
ロイの言うことはもっともだと思った。
だが、何も言わず、まるで『気を遣うように』部屋を出て行ったのはロイの方だ。
正直、今はロイが何を思っているのかリューイには分からない。
「俺も詳しくないが……。昔から自然の奥深いところに、魔の力は溜まりやすく、人の心の隙に入り込んで……醜さと引き換えに魔力を与える契約を結ぶと」
「……………」
「それが…魔女だと言われている」
「………詳しくないと言いながら、詳しいな」
「昔、本で読んだだけだ。それに本当にいるだなんて俺も思っちゃいなかった」
肩をすくめたロイは頭を掻く。
「……魔女は…記憶が好物というのは本当か?」
「いや、それに関しては読んだことはない」
「そうか…」と返事したリューイに、ロイは組んでいた腕を外す。
「もう一度……そこへ行ってみてもいいんじゃないか」
「…………おそらく、姫もそう考えてるんだろうが…」
渋るリューイにロイがフッと笑う。
「危険…か?」
「当たり前だ。魔女などと……得体の知れない」
「ローハーグ最強……つまりはこの世で最強と言われるお前でも…魔女は怖い、というわけか」
ロイのやや挑発的な発言に、リューイは乗らない。
物理的な攻撃で倒せるのなら恐る必要もないが、それも分からない。
現に昔、ルシアの母の命は、リューイの目の前でいとも簡単に奪われたのだ。