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† 姫と剣 †
第10章 覚悟
2日後────…
ルシアは腕に巻かれた包帯をじっと見つめていた。
傷の快復も良好。
多量の出血で、ふらついていた体もだいぶ良くなった。
明日は、二度目の帰国日。
そして今、ロイと共に再びアノアの丘の上に立って国を見渡している。
「そういえばアノアは染め物も有名でしてね」
隣で先ほどから、ロイがなんてことのない話をずっと続けている。
いつもより口数が多い。
まるでルシアの話す間がなく、先ほどから話を切り出すタイミングがない。
「………あの、王子…?」
「そうだ、サワンを先ほどたくさん採らせておきましたので、明日の帰国の際にお持ちください」
「それは…ありがとうございます」
「この前は渡すのを忘れてしまいましてね、それで…」
少し忙しないロイの様子に、ルシアの胸が痛む。
きっと、これから自分の話したい内容をロイは察している。
それが何となく分かるから、ルシアも困っていた。
「護衛も、先日の5倍はつけるように手配をしておりますので、どうかご安心────」
「────王子」
手振りで忙しく動くロイの手を、ルシアはぎゅっと掴む。
さすがのロイも、動きと口を止め、ルシアに向き直った。