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† 姫と剣 †
第10章 覚悟
ようやくロイの動きが止まったのを確認すると、ルシアはそっと手を離した。
「お話ししたいことがございます」
強めの風が吹いて、ルシアとロイの長い髪が靡く。
フッと小さく鼻で笑ったロイは髪をかき上げながら、再び国を見下ろした。
「どうしても……聞かないとダメでしょうか」
「………どうしても、聞いていただきたいです」
少し笑いながら「んん」とロイが唸る。
「あなたのお願いと言うことでしたら……仕方がないですね」
ロイの言葉を聞いて、ルシアはごくりと唾を飲んだ。
「あの日………助けに来て下さって…ありがとうございました」
突然の敵襲に、死を覚悟したあの瞬間…
「王子が来てくださらなかったら……間違いなく私は命を落としていました」
改めてルシアは頭を下げる。
「だから…本当に感謝しております」
「…………そんな、やめてください」
ロイの言葉に、ルシアは顔を上げる。
「愛していたら当たり前です」
その微笑みがルシアに刺さって、思わずロイから目を逸らした。
そして、自分の手元を見て、ロイからもらったルビーを指輪を見つめた。
「助けていただいたことも……このアノアを見せて下さったことも、全て、本当に感謝しています」
ルシアがゆっくりと指輪を外すのをロイは驚くことなくただ見つめる。