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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
あの茂みの奥を抜けて、さらに林の中を進むとたどり着くのは……
「マヤごめんなさい、私行かないとっ……」
「えっ……?行くってどこにです?」
マヤの問い掛けに答えないまま、ルシアはその場から走り出す。
間違いない。
あんな仕打ちをみんなの前でされた後。
グレンが向かっているのはリューイの家────
「リューイっ……」
リューイは強い。
だからグレンに負けるようなことはないはずなのはルシアにもわかっていた。
それでも、何かあったら……
グレンは卑怯者で、どんなことをしでかすか分からない。
最悪の光景が頭に浮かんで、ルシアはグッと歯を食いしばった。
そんなことさせない────
例え今日以降会えなくなるとしても、それでもリューイを…
大切な人を守りたい。
その強い気持ちで、ルシアはグレンを追いかけ、ひたすらに走る。
その後ろで、マヤはパニックになりながらも、明らかにグレンの方へと向かったルシアの身が心配で、必死に追い掛けていた。