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† 姫と剣 †
第10章 覚悟
本当にランドルト家が護衛にふさわしければ、また選ばれるはず。
長く続いた王家とランドルト家の信頼をこのタイミングで一度一掃する事が、互いのためであるとアースは考えた。
信頼の上に胡座をかいた結果王妃を守れなかったのなら、それはこれからの王家のために良くない。
心から王家を想うからこそ、ランドルト家は一旦身を引いたのだ。
リューイは……
何も言わずとも鍛錬に励んでいた。
時には見ていられないほど、身を削って……
あの出来事は彼にとってトラウマになってもおかしくないほど恐ろしいものであったのに、リューイは折れる事はなかった。
そして、自分の力で護衛の騎士となった。
リューイはランドルト家の中で真の護衛の騎士、だ。
立派に育ったものだ……
アースはそう心で呟きながら、一筋の涙を流す。
「それに、こう見えて私も強いんですよ!」
かつて仕えたエステルにそっくりなルシアの笑みに、アースがつられる。
アースも今は現役を退いた身であるが、元は有名な騎士。
ルシアの体つきやちょっとした身のこなしから、ルシアの言っている事が嘘ではないのが分かる。
「ああなった姫は…止めても無駄ですよ」
リューイが少し笑い混じりにそういうのを聞きながら、アースは「どうかお気を付けて……」とルシアに声を掛けた。
その言葉にルシアは頷くと、リューイと見つめ合いながら、今一度覚悟を決める。
取り戻す……
自分の記憶を─────
そう心で呟きながら。