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† 姫と剣 †
第11章 森の奥
幾度となく、眺めた森を、今一度ルシアは眺めている。
入ることは禁じられ、
ただただひたすらに眺めるだけだった日々も今日で終わる。
記憶は取り返せるか分からない。
それでも…
「姫、やはり他の兵士を呼びますか」
中々一歩を踏み出さないルシアに、リューイが背後から声を掛ける。
「いいえ…魔女が何をしてくるか分からない。余計な犠牲は増やしたくないの」
「…………」
「それに…狼なら、別に私とリューイだけで事足りるでしょ?」
にこりと微笑んだルシアに、リューイは片眉を上げると、そのままルシアを抜かして前へと進む。
「何をおっしゃっているんですか」
「……───────」
「私”だけ”で充分です。今度こそ姫には絶対に怪我をさせませんよ」
「…っ………他にも兵士がいるか、って聞いたのはリューイじゃない」
背中の大剣を掴んで下ろしたリューイの背中を見て、ルシアはほんのりと頬を紅らめる。
緊張する場面でありながら、さらにリューイに惹かれるのを感じながら、ルシアも剣を抜くとリューイの後を追って森の中へ入っていった。