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† 姫と剣 †
第11章 森の奥
暗い森の中。
先ほどの快晴が嘘のように、霧がたちこめている。
「……気味が悪い…わね」
パキという音に、反応して背後を警戒して振り返るが、枝が落ちただけで何もいない。
「あの日も…霧が濃かったのを思い出します」
「そうなの…ね」
「怖い、ですか」
正直、リューイのいう通り、怖い気持ちが胸いっぱいに広がっている。
大人になった今でもこんなに怖いのだ。
当時も怖かったに違いない。
でも……
「リューイがいるから…」
「………………」
「リューイがいるから、大丈夫よ」
霧がかる中、ルシアが笑うのが見える。
それにトクンとリューイの胸が鳴る。
「あなたは……本当に変わりませんね」
「え……?」
それって、どういう意味?と聞こうとしたところで、獣の雄叫びが聞こえてきて、2人は足を止めた。
「今の…」
「はい、きっとあいつらですね」
霧の中、視界で影が動く。
すかさずルシアとリューイが剣を構えた。
「姫……絶対に無茶はしないでください」
「ええ。分かってい──」
「──っ……!」
会話の途中、突然に姿を現した狼に、ルシアとリューイは身をかわす。
黒い毛並みに、赤く光る目。
大きな牙に、荒い息。