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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
ルシアに剣を突きつけるリューイのことは、マヤもなんとなく覚えていた。
悪い人ではなかったはず、なのに、なぜ今こんなことになっているのか。
マヤはガクガクと震えながら、「ぶ、無礼者!!!」とリューイに向かって叫んだ。
「なんだお前は、こいつの仲間か」
「こ、こいつっ……!? ですって⁉︎」
目を見開いたマヤは、何も分かっていない様子のリューイに腹を立てる。
「いいから今すぐ、そ、その剣をしまいなさい!! 」
「マヤっ……」
「そのお方の名はっ……ルシア…っ…、ルシア=ウェルズ=ローハーグっ……」
カタカタと震えながら、マヤが言った名に、リューイは大きく目を見開く。
「こ、この国の姫君ですよ!!!!!」
「─────────…!」
思いもよらぬ事態にリューイは剣を下げながら、後ずさる。
ローハーグの姫……
「ル、シア────」
リューイはそれだけ反復して、剣を静かにその場に落とす。
緊迫した状況が解かれると、マヤは急いでルシアの元へと駆け寄った。
「ルシア様っ……お怪我は……っ」
マヤに支えられてルシアは立つと、ルシアは静かに泣きながらリューイを見つめた。
「ごめんなさいっ………リューイ……っ。騙すつもりはなくてっ……」
ルシアの言葉にリューイは固まったままで何も発しない。
こんな風に終わってしまうなんて……
足枷でしかない姫という身分に、虚しさが込み上げる。
「ルシア様、帰りますよ」
呆然としたままのリューイからルシアは仕方なく視線を外した。
そして、そのままルシアとマヤは王宮へと戻っていった。