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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
「っ……──────」
だがしかし、あまりの動きの速さに間に合わず、ルシアは後ろへ倒れ込んだ。
そして、突然に喉元に突きつけられた剣を見て、ルシアの額から冷や汗が流れた。
「………お前は…何者だ」
「リューイっ……」
剣を突きつけている相手に、ルシアは驚いて身を乗り出そうとするが、リューイが突きつける剣のせいで身動きが取れない。
ゴクリと唾を飲むと、リューイは顔を歪ませた。
「身なりがよく、素性を明かさない上に帯剣している……もっと疑うべきだったか…」
「ちょ、ちょっと待って……」
「加えて今グレンに見せた剣技……只者ではないことは分かっている」
冷たい視線に、ルシアは胸が張り裂けそうになっていた。
リューイを守りたくてしたことが、2人を引き裂いている。
もう明日から会えないというのに……
「敵国の使いか? 俺の次の任務を知って近付くように言われたか」
「……そんなんじゃないわっ………。それにあなたの次の任務なんて知らないっ……」
「では何者なのか答えろ!!」
威嚇するようなリューイの大きな声に、ルシアの体が震えた。
そして深緑の瞳に、涙が滲む。
もはやこれまで。
夢物語は儚く散って終わりを迎える。
正体を明かすしかないのだろうか?と考えたその時、やっとルシアに追いついたマヤが茂みから飛び出し、2人の状況にひえぇ!と声を上げた。