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† 姫と剣 †
第12章 恋慕






「怖い……?」



濃い霧が立ち込める中、少しルシアの手が震えているのを感じながらリューイが尋ねる。




「リューイがいるから……大丈夫よ」




幼い2人に黒い影が忍び寄る─────……





全てはマリーの計画通り。



子どもではまるで相手にならない狼。



そして、助けに現れたエステル ────



リューイが森を出て父を呼んでいる間、すっとエステルの元に寄ったマリーは怪しく微笑んで耳打ちする。




「この奥に魔女がいる。きっと魔女なら、ルシアの命を救うこともできるかもしれない」




僅かな望みをかけて走り出したエステルは、



魔女のもと、何の迷いもなくルシアのために自分の命を差し出した。



本当は、エステルとの取引を無視して、ルシアも殺すのが、マリーからの指示だった。



そうすれば、全てがマリーの計画通りであったのに……



魔女であるリサは、



ルシアの持つリューイとの思い出に心奪われる。



身分違いも厭わない、幼き2人の…─────



そしてマリーの指示を無視して、殺すことはせずに記憶だけを抜き取った。






奪われた記憶。





それは、



心優しき姫、ルシアの




愛に溢れた幼き日の思い出………




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