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† 姫と剣 †
第12章 恋慕

うるうるとルシアの深緑の瞳が揺れる。
花……
今日は母の日。
そのためのものなのだろうということが、リューイにも分かった。
「だからって……」
「リューイがいてくれたら、行ける気がするの」
「え……う、うんん……」
正直、頼られている事に嫌な気はしなかった。
「リューイも同じお花をあげましょうよ?」
「…………………」
「ね? お願い。ついてきて」
目をキョロキョロと泳がせたリューイは困惑した後に、はぁ……と深くため息を吐く。
「ルシアを守るのは……僕の仕事だから」
リューイの言葉にルシアはパァと顔を明るくさせる。
仕事だから、などとかっこつけているが、結局その瞳でじっと見つめられたせいで根負けしただけの話だ。
「ありがとう! リューイ、好きよ!」
こうやって言ってもらいたい、という少しやましい気持ちもある。
「はいはい」と照れを隠すようにルシアをいなしたリューイは、森の奥を見つめる。
かっこつけたはいいが、やはりリューイもまだ子ども。
恐怖心がないわけではない。
ギュッとルシアの手を握ったリューイは、そのまま飛び込むようにして森の奥へと入っていった。
その様子を傍から見ていたマリーは、計画通り「ルシアがあの森の中へ入っていった」と伝えるためにルシアの母エステルの元へと向かっていた。

