この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
† 姫と剣 †
第12章 恋慕

閉じたルシアの瞳から涙が流れるのを見ながら、リューイはハッと息を飲む。
魔女が生き絶えてから、数分後。
リューイの腕の中で、ルシアがゆっくりと目を開いた。
「姫っ……! 姫っ………!!」
目覚めたばかりで、ルシアは目いっぱいに涙を溜めながら、リューイにゆっくりと腕を伸ばす。
「…………うそつき…っ」
思いもよらぬ言葉に、リューイは眉を寄せる。
その間ルシアの涙は止めどない。
まるで今夢を見るかのように過去のことを思い出した。
優しかったお母様。
いつもそばにいてくれたリューイ。
そんなリューイが大好きだった幼い自分。
そして、唆してきた叔母─────…
「あの日……お花を摘みに森の奥へ行きたいと言ったのは……あなたではなく…私だわ……」
「……姫っ…………」
「そうやって……っ…私が自分を責めないようにあなたはっ……」
リューイは、この身以外も守ろうとしてくれていた。
「姫……記憶が……」
コクリと頷くルシアにリューイは、信じられないとばかりに目を見開く。
そしてルシアはそんなリューイの頬に触れながら微笑んだ。
「いつも私を……守ってくれてありがとう……」
2人だけの大切な思い出が
今再び2人の間で蘇る。
つられてリューイの頬に一筋の涙が伝う。
涙が滲む中、ルシアはリューイを引きつける。
「リューイ、好きよ」
涙で濡れたルシアの深緑の瞳と、リューイの明るい茶色の瞳が絡む。
「………ルシア……─────」
呼ばれ慣れた名。
過去を取り戻したルシアにとっては、今は呼び捨てで呼ばれる方が心地よい。

