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† 姫と剣 †
第2章 成人の儀
王宮内。
長い廊下の中を歩きながら、ルシアは窓を見上げた。
天気が良く、太陽が王宮に降り注ぐ。
ルシアは片手でその光を遮りながら、はぁ……とため息をついて、視線を落とした。
あと数時間で、ルシアの成人の儀が始まる。
準備をそろそろ始めなくてはならないのだが、中々気が進まない。
リューイは……今どうしているだろうか……
昨日のことから、そればかり考えているが、その答えは永遠に分からぬまま。
忘れて前に進むしか道は残されていないというのに、想像以上に想いが大きくなってしまっていたことに今更気付く。
ルシアは、涙が滲みそうになるのを必死に堪えて、自分を奮い立たせた。
成人の儀をするということは、正式に王位継承権を受けるということ。
この国を背負うものとして…もっとしっかりしなければならない────
顔を上げると、突然目に入った人物にルシアはハッと息を飲んだ。
「晴れの舞台の日……とは思えないわねぇ」
囁くような、隙間に入り込むような、少し低めの声。
ケバケバしい装いに、手足は不健康と言えるほどに細い。
「マリー叔母さま……」
彼女は、ルシアの叔母────
ルシアの父である現ローハーグ王の腹違いの妹。
「今日はあなたの日なのに……なぜそのような浮かない顔を…?」
心配しているような言葉とは裏腹にニヤリと笑ったマリーに、ルシアはそんな…とだけ返事をした。
ルシアにとって叔母であるのだが、正直ルシアは昔からマリーが苦手だった。
何を考えているのか分からない。
でも、いつも腹の中で何かを思っていそうな雰囲気が漂っている、のだ。