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† 姫と剣 †
第2章 成人の儀


諦めるしか道がない。


それほどまでに、ルシアとリューイの立場の差は大きい。



「あなたは……いずれどこかの国の王子と、結婚される。そこで幸せに……」



立ち上がったルシアは、リューイ、と声を掛ける。



「ねぇ…。リューイが……実はある国の王子でしたって、そんな事あったりしないの?」



頬はまだ涙で濡れたまま。


抜け殻のような状態で、ルシアは自嘲気味にそんなことを言う。



「………私は、ランドルト家の長男。紛れもなく騎士の家系のもの、です」


「そう……。物語だったら、そんな素敵なオチもあるのにね」




現実は……そううまくいかない。




「これから、私が他の人と結婚し、子どもを産んで、おばあさんになって……その間あなたは私の傍でずっと私の命を守り続けるの……?」



「それが私の仕事ですので」


「仕事………ね」



好きな人の傍で、他の人と幸せに暮らす。


そんな事出来るだろうか。


はじめは、自分の護衛がリューイで再び会えたことに喜びを覚えたと言うのに、この先に待ち受ける現実を考えると、それは悲運としか言いようがない。




「何故私は姫なんでしょうね」


「……………」


「………もういいわ」



諦めたようにルシアがそういうと、リューイは立ち上がって部屋を出ようと扉へ向かう。




「ルシア姫……」


リューイの方に振り向くことなく、ルシアは先程腰掛けていた鏡台の前の椅子に座る。



「本日は……お誕生日、おめでとうございます」



リューイの言葉に、ルシアは目を見開く。


失礼しますと言って扉が閉まることを確認すると、ルシアはその場で声を上げて涙を流していた。




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