この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
† 姫と剣 †
第2章 成人の儀
諦めるしか道がない。
それほどまでに、ルシアとリューイの立場の差は大きい。
「あなたは……いずれどこかの国の王子と、結婚される。そこで幸せに……」
立ち上がったルシアは、リューイ、と声を掛ける。
「ねぇ…。リューイが……実はある国の王子でしたって、そんな事あったりしないの?」
頬はまだ涙で濡れたまま。
抜け殻のような状態で、ルシアは自嘲気味にそんなことを言う。
「………私は、ランドルト家の長男。紛れもなく騎士の家系のもの、です」
「そう……。物語だったら、そんな素敵なオチもあるのにね」
現実は……そううまくいかない。
「これから、私が他の人と結婚し、子どもを産んで、おばあさんになって……その間あなたは私の傍でずっと私の命を守り続けるの……?」
「それが私の仕事ですので」
「仕事………ね」
好きな人の傍で、他の人と幸せに暮らす。
そんな事出来るだろうか。
はじめは、自分の護衛がリューイで再び会えたことに喜びを覚えたと言うのに、この先に待ち受ける現実を考えると、それは悲運としか言いようがない。
「何故私は姫なんでしょうね」
「……………」
「………もういいわ」
諦めたようにルシアがそういうと、リューイは立ち上がって部屋を出ようと扉へ向かう。
「ルシア姫……」
リューイの方に振り向くことなく、ルシアは先程腰掛けていた鏡台の前の椅子に座る。
「本日は……お誕生日、おめでとうございます」
リューイの言葉に、ルシアは目を見開く。
失礼しますと言って扉が閉まることを確認すると、ルシアはその場で声を上げて涙を流していた。