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† 姫と剣 †
第3章 決闘

紐に伝って、ロイが華麗に降りようとする中、ルシアは目をギュッと瞑る。
思いもよらない展開に頭がついていかない。
自分の身は自分で守れる、だなんてそんなことを豪語していた自分が今となっては恥ずかしい。
薬を飲まされたとはいえ、今は手も足も出ないことに、ルシアは情けなさを感じていた。
それでも抵抗はやめず、持てる最後の力を振り絞る。
「……りゅ……ぃっ……」
「───────……」
「りゅ…リューイっ……!」
聞こえてきたルシアの声に、リューイは、扉の外でハッとして顔を上げる。
そして扉の方を向き直ると、ゴクりと唾を飲む。
空耳か……いや、たしかに今───
躊躇っている中で、中からおかしな物音が響いていることに気付いたリューイは、頭を振ると「失礼いたします」と声を掛けて、中へ入っていった。
「ルシア姫っ……」
辺りを見渡すが、ルシアもロイの姿もない。
食べかけの皿。
飲み掛けのグラス。
ヒューーっと風が音を立て、カーテンが靡く。
それにハッとしたリューイはベランダへ駆け寄る。
「姫っ………」
暗闇の奥、目を凝らし耳をすます。
複数人の歩く音と、馬の息遣い。
そして闇の中で何かがうごめく。
「まさかっ………」
チッと舌を打ったリューイの額に冷や汗が流れる。
影を追うために、瞬時に部屋から出ると、ちょうどマヤとすれ違った。

