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† 姫と剣 †
第3章 決闘
ロイは、用意された布で体を覆い、ルシアを抱えながら馬を走らせる。
従者はセスも含めて数人。
セスも馬を走らせながらロイに声を掛ける。
「王子っ……! やはり引き返しましょう! こんなことっ……許されるわけ──」
「────黙れ」
「いいえ! 黙りません! こんなことをすればっ……ローハーグとの戦争は免れませんっ…!」
言われた通りに、諸々の手筈を整えたセスだったが、まさかロイの計画が「ローハーグの姫を拉致すること」だとは夢にも思っていなかった。
これまでロイの気まぐれに色々と付き合わされてきたセスだが、今回の件はさすがにまずい。
先ほどから必死にそれを伝えているのだが、ロイは戯けた様子もなくひたすらに馬を走らせているだけである。
「ロイ王子の気まぐれでアノアの国が───」
「気まぐれではない。俺は本気だ」
そう強くセスに言い返したロイは、自身の胸の中ではぁはぁと息を上げているルシアを見つめる。
「ルシア姫……しばらく揺れますが、ご辛抱下さい」
大切そうにルシアを抱えるロイの姿に、セスは冷や汗を流す。
「父上にお頼み申し上げて、そしてまた改めてローハーグへ正式に婚姻を申し込めばよろしいではないですかっ…!」
「姫は望み通りの返事をくれないだろう」
「なにも…ルシア姫の気持ちだけで婚姻が決まる訳では──」
「───それでは意味がない」
「っ………攫ったって同じではないですかっ…!」