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ハニードロップ
第1章 夢
「いえ、あの、無理です」

 長い長いフリーズの後に出てきたのは冷静な言葉だった。いや、だって無理でしょ?こんなイケメンと付き合うって、付き合うってことは、あんなことやこんなことするってことでしょ?……無理無理無理無理!心臓がいくつあっても足りない!

「俺嫌われてる?」
「いいえ、尊い推しです」
「好かれてるってこと?」
「少なくとも男の人の中では一番」
「ぶはっ。奈子ちゃんめっちゃ面白い」

 面白いことを言っているつもりは全くないのだけれど、尊い笑顔を見られたのでよしとする。三木村さんはひとしきり笑った後、目を細めて私を見つめる。綺麗なお顔に昇天しそうだ。

「ならお友達から始めよう」
「お友達にムラムラする自信しかありません……」
「いーじゃん、ムラムラ。俺はずーっとムラムラしてるけど」
「ダメです、お友達にはムラムラしちゃいけないんです……」
「お友達にムラムラし始めたら、恋人になっちゃえばいいんじゃない?」

 膝の上でギュッと握りしめていた手に、三木村さんの大きな手が重なる。大袈裟なほどビクッと揺れた身体を見て、一瞬三木村さんの目がギラッとした気がする。まるで獲物を目の前にした肉食獣みたいな雰囲気に固まってしまう。
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