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人生を乗りかえる
第1章 同窓会
 同窓会で初恋の人と出会うというと、ちょっとしたドキドキ感がある。しかし、よく考えてみると初恋の人と思っているのは、自分だけで、相手に取っては普通の人ではないだろうか。相手に嫌がられるほどラブレターでも出していれば、別の意味で普通の人ではなくなるが…
 この話は、同窓会当日に「普通の人じゃない」と思わせた男の話である。
文字通り、みゆきは和也にとって初恋の女性であった。そして偶然にも一度だけラブレターを卒業式の一週間前に手渡した。絶妙のBAD タイミングに。卒業式と卒業後の事で生徒も先生も頭の中が一杯の時期に和也は白石みゆきに恋をした。
和也は高校の三年間を無駄に過ごしてしまった一人と言える。運動や勉強、全ての事にやる気がでない影の薄い存在だった。そんな彼がみゆきを好きになったのは、奇跡に近かったのかもしれない。
和也は同窓会の席でみゆきを見つけ、声をかけた。

「白石みゆきさんですか?」
「そうです。えっと〜…」
「大沢です大沢和也です」

みゆきは名前を聞いてもピンきていなかった。残念ながらみゆきにとって和也は、普通の人にもなっていなかった。ここで昔の和也なら、黙ってその場を立ち去っていただろう。

「え〜残念!完全に記憶からデリートされちゃったんですか?」

和也は少し戯けて見せた。

「ごめんなさい…」
「僕の渾身のラブレターだったのにな〜」

和也は自分の持ってる最強カードでもう一度アタックをかける。

「えっ…ラブレター?」

BINGO!

「思い出してもらえました?…渾身の…」
「思い出しました!」

和也の言葉を遮る様にみゆきが叫んだ。

「あの時和也君と今の貴方が違いすぎなのよ。」

みゆきは笑いながら、和也を全身舐める様に見ながら言った。和也はジーンズにスニーカー、ポロシャツにジャケットというラフな出で立ちだが、何か自信の様なオーラを放っていた。和也も高校を卒業してからの15年間を無駄にはしていなかったのである。
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