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不倫研究サークル
第16章 卒業
「圭……、色々とありがとう」

東京駅のホーム、愛莉が見送りに来てくれていた。
腕には、2歳になった女の子を抱いている。

「愛心《あいこ》~、圭ちゃんに『バイバイ』して~」

「バイバイ、けいちゃ、バイバイ」女の子が小さな手をふる。

愛莉は二年前に女の子を出産。名前を愛心と名付けた。
僕の後を引き継いだカテマッチの運営の仕事を続け、シングルマザーとして仕事に子育てに奮闘していた。

そして、来月からは大学に復学することになっている。

「圭なら、きっと良い先生になれると思うけど、変に優しすぎるから、中学生に舐められないようにね。 特にJCに 笑」

JCなら、陽菜という最強のJCを相手にしてきたという自負もある。そこは心配ないと思いたい。

「大丈夫だよ、ビシッと決めてやるさ」

「圭……、ゴメンね。 三年前、圭の気持ちに応えられなくて」

「ううん、僕たちはまだ幼かったんだよ、きっと、愛莉の選択は間違ってなかったと思う」

「ありがとう」


「愛心~、ちょっとここに座っててね」

そう言うと、愛莉は愛心をベビーカーに乗せる。

「圭……」

両手が自由になった愛莉は、僕に身体を寄せてきた。周りには他の乗客もいたが、構わずに僕は愛莉を抱きしめた。

「たまに、東京へも遊びに来るよ」

「うん、待ってる。 元気でね」

「愛莉も、元気でね」


僕たちは、三年ぶりにキスを交わした。

またしても別れのキスだ。



やがて、新幹線の発車を促すアナウンスが流れ出し、乗客が次々と車内へと入っていく。

僕も愛莉にもう一度キスをすると、車内へ入り、座席から愛莉に手を振る。
愛莉はまた愛心を抱き、愛心が手を振っていた。

ベルがけたたましく鳴ると、少しずつ愛莉たちが後方へと追いやられ、あっという間に僕の視界から消えていった。




高層ビルが流れていく……。


四年間、出会った人……。


別れた人……。



僕に関わった人たちの顔が浮かんで、思わず涙がこぼれそうになった。



(さようなら、東京……)




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