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不倫研究サークル
第5章 初デートはホロ苦く
長い階段を降り、江の島神社の参道を出ると、浜焼きのお店が良い匂いをさせている。

辺りはすっかり日が傾き、あと少しで夕陽の時間帯になるだろう。
僕は、そこで正式な交際を申し込むつもりだった。

「ねえ、圭君。サザエを食べない?」

さっきから、サザエだハマグリだイカだと、海鮮焼きの良い匂いがお腹をくすぐっていた。僕も食べたいと思っていたので、二つ返事で「OK」と言う。

「わたし、ビール飲んじゃおうかな? 圭君は?」

意外だった。小梢がお酒を飲むなんて想像できない。

「あ、いや、僕は一缶は飲めないから……」

「じゃあ、二人で半分こしよ。わたしもそんなに飲めないから」


注文したサザエのつぼ焼きとビールを目の前に、僕たちは固まってしまう。

「うは~~、これは美味そうだ」

「ヨダレが出ちゃうよ~」

潮と炭の美味しそうな匂いに食欲をそそられ、二人でヨダレを零す。


プシューー!

小梢がビールのプルタブを開けると勢いの良い音が鳴った。

「圭君、先にどうぞ」と小梢が差し出したが、実は僕はビールを飲んだことがない。

「あ、いや、小梢がさきにどうぞ」と手のひらを小梢の方へ向ける。

「じゃあ、いただくね」

そう言うと、小梢は喉を鳴らしながらビールを流し込んだ。


「くは~~、この一杯がたまらないね~~」

「はい、圭君」

と、小梢は缶ビールを僕に差し出した。


(こ、これは、もしや……、関節キスでは?)

「で、では、いただきます」

自分でも声が震えているのが分かる。こ、小梢と関節キス……。

僕は缶ビールに口をつけ、小梢同様に喉の奥に炭酸を流し込んだ。が……。

(ぐほっ! 苦い!)むせてしまう。

「圭君、大丈夫? もしかしてビールって初めてだった?」

「あはは、じ、じつは初めて 笑」


「ウフフ、圭君って可愛い 笑」

笑いながら言う小梢に、またしても違和感を感じてしまう。まるで菜美恵が僕に言うような言い方だ。それに、飲みなれている感じもした。

僕が抱いている小梢像とは違った一面だ。


少し顔を赤くした小梢も可愛い。思わず見とれてしまう。

「ん? どうかした、圭君」

すっかり夕陽の時間帯になり、街灯は灯をともしていた。


いよいよ、今日のメインイベントだ……。




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