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イキ狂う敏腕社長秘書
第7章 【妬み、汗、涙】





好きになった方が負けなんだ。




あの日マコさんと交わした約束が脳裏に蘇る。
何ひとつ叶えられない。




結婚…………出来ないよ。




どんな手段も塵となって消えていく気がした。




「泣かないで……美雨」




ごめん……ごめん………と謝る明里さんの低い声が頭上で響く。




謝って欲しくない。
マコさんが欲しい……欲しくて堪らないの。
どうしてダメなの。
与えてくれないなら優しくしないで。




「好きなの………ごめんなさい…っ」




「美雨……」




明里さんに当たったってそれは違うってわかってる。
でもどうしたらいいかわかんない。
行き場のない感情が溢れ出す。
どうしよう、止まんないかも。




気付いたら何度も明里さんに謝っていた。
土下座もした。
脚にもしがみついた。




「何でもしますから、私からマコさんを奪わないでください…!」




受け入れてもらえないこともわかっている。
でもすがるしかなかった。
すがることで自分を保っていられるの。
もう気が気じゃない。




「帰るわ」




哀れに思ったのだろうか。
追いかけて腕を掴んだらそのまま横の壁に背中をぶつけるほど押し付けてきた。




冷たい視線から怒りが滲み出ている。
初めて見る顔だった。
押し付けられたまま軽く首を締められ片手で頬を挟まれ口が突き出る形に。




声も出ないし息も上手く出来ない。




「その頭に叩き込んで?あなたは私に従ってればいい、マコとどうにかなれるなんて1ミリも期待しないで」




ゴホッゴホッと咳き込んでその場に崩れる。
中に戻ったかと思えば私の服を持ってきて上だけ着させてくれた。




「美雨はあの人だけに腰振ってればいいから」




怖くて目も合わせられない。
小さく掠れた声で「はい…」と答えるしか出来なかった。




ため息ついて明里さんも自分を責めているようだ。
頭を抱えている。




「ごめん、言い過ぎた……私は美雨が好き……だから今の関係壊したくない」




下から覗き込むようにして唇が重なる。
優しく啄むキスはこの上なく哀しいものだった。
交わしたくもない約束を突きつけられた気がした。












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