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イキ狂う敏腕社長秘書
第8章 【間違った選択】
眠れなくてベットの上に座ったままどれほどの時間が経っただろう。
いつの間にか外は雨が降っている。
時計の針は午前1時を過ぎていた。
シャワーを浴びる気にもならない。
無気力ってこのことを言うんだね。
突然閉ざされた2人の未来に枯れたはずの涙が何度も蘇る。
今日だけ………今日だけだから、と言い聞かせる。
携帯の電源は無意識に切っていた。
誰とも話す気力は残っていない。
膝を抱え染みてく涙。
聞き違えだろうか。
部屋中にインターフォンが鳴り響いている。
扉を叩く音。
雨の音とはまた違う。
はっきり聴こえたの。
“美雨!”って。
身体がビクン…と反応した。
幻聴だったら悲しい。
だってそんなはずないもん。
“美雨開けて!お願い”
目を閉じれば瞼の裏、鮮明に浮かぶあの微笑み。
もう断ち切らなきゃいけないのに。
この身体はまだ求めてしまう。
“美雨?美雨!顔見せて、お願い”
扉の向こうに本当に居るの…?
聞き違えるはずなんてない。
こんなにまだ想ってる愛しい人の声。
カチャン…と鍵を開けた瞬間、勢いよく扉が開いて身構える。
雨の音が鮮明に聴こえてきて見上げた人影。
呆気なく温もりに包まれて目を閉じた。
夢なんじゃないかって疑ってる。
鼻腔に広がる大好きな匂い……
こんな夜遅くにどうしたの。
「ごめんなさい……携帯…」
「無事で良かった……」
「え…?」
息を切らせるほど走って来たの?
あまり顔見ないで……泣いたのバレる。
「美雨、明里さんに何言われた?」
え…?何でそのこと………明里さんから聞いたの?
誤魔化す前にたたみ掛けられる。
「私たちのこと話したんでしょ?私のこと譲れないとでも言われた?好きになるなって言われたんでしょ?」
いつになく目が焦ってる感じ。
「マコさん、お店は?終わったの?」
「うん、終わって明里さんから連絡来てて……美雨の傍に居てやれって。そんな時はだいたい美雨が壊れそうな時だから飛んで来たの」
「あ、そうなんですか?すみません、心配かけちゃって」