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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】

ご主人さまを叩いてしまった!

血の気が引いた。どうしよう…どうしよう?!

体は…起こせない。…何とか声だけでもかけようとした矢先、携帯が光った。…メール通知だ。通話は…いつの間にか切られていた。



「──ははっ」
「…っ?」

携帯を手に取り操作した彼から、何故か自嘲する様な声が漏らされた。訳がわからず怯えた視線を向ければ。

「ほら」

見て、と携帯を手渡されて。
表示されていたのは、受信メール画面だった。






『いつまでオナってんだよ』






……。差出人はもちろん麗さま。


「違いねーわ。未結と居んのにな」


今度こそ電源を切られた携帯は、運転席のシートに軽い力で投げ戻された。



「やめるわ。萎えた」
「えっ…?…んぁ…っ」

拘束し続けていた手も、深部を支配していた熱も、一気に離れた。
突然放り出された格好のわたしは何も出来ない。…怒らせてしまったかと、怯える以外は。

「とりあえず拭けるとこ拭いとく。帰ったら即風呂な」

グローブボックスから後ろ手に取り出されたウェットティッシュ。流星さまはその何枚かを引き出し、わたしの肌に当てた。

「っひゃ…っ」

ひんやりとした感触に身を捩りつつ、おとなしく受け入れる。彼はわたしと目を合わせることなく黙々と…でも丁寧に、行為で濡れて、汚れたいくつもの箇所を払拭してくれた。

やがて衣服が元通り着せられて。自分の始末も終えた彼は運転席に戻り、シートを倒して横たわった。…目元は右腕で覆われ、表情は見て取ることができない。


「流…、…あの…その…ごめ」
「ごめん、未結」

叩いてしまったことは事実。それだけは謝りたくてかけた声は遮られ…先に謝られた。…どうやら怒ってはいないようだけれど…でも…






「……話して…くれ…ますか」


その言葉が口から飛び出していた。
聞きたかった。話して欲しかった。


普段の貴方じゃなくなった理由。
そしてなにより───『幸さん』のこと。

彼の口から彼の言葉で聞きたかった。話して欲しかった。


それが彼にとってつらいことだとも知らずに。
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