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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】

逃げ込んだはずの暗闇。
それでも考えてしまうのは、彼のこと。
我儘で気分屋で、無神経で意地悪。
優しいと思った直後に冷たくなる。
その逆だって。いつだってそう。
流星さまといると、振り回されてばっかり。
それでもわたしは彼を好きになった。
彼もわたしを好きだと言ってくれた。
でも、どんなにその言葉を告げても告げられても
どんなに身体を重ねても、決して『恋人』じゃない。
だって、わたしは家政婦。彼はご主人さま。
それ以前に、彼とは住む世界が違いすぎる。
そう。そんなのわかってる…
『ああ、幸ちゃんだ』
椎名さまの言葉が反芻する。
『流星の恋人だよ』
わたしは幸さんとはちがう。
わたしは、家政婦。
どんなに好きだと告げても、好きだと告げられても
どんなに身体を重ねても、決して『恋人』じゃない。
…だから流星さまはわたしには
どんなことをしても平気なの?
幸さんにはできなかったことも
わたしにはできてしまうの?
『流星が本当に"好き"なのは幸ちゃん』
──だから?だからなの?
──わたしは、幸さんの…
『未結ちゃん、幸ちゃんに似てるんだ』
流星さまにとってのわたしは
幸さんの身代わりでしかない?
─愛してるよ─
あの言葉もわたしの為なんかじゃなく
わたしを重ねて見ていた…幸さんに?
…いやだ。違う、違う!ちがう!!
「わたし…幸さんじゃない!」
「ッ!」
全てを断ち切るように目を見開き、叫びながら振り払った右手。
それが彼の左頬を直撃していたことを知ったのは、動きを止めた彼が顔を伏せてからだった。

