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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】

何処から話そうか。……あー、やっぱここからかな。
五歳ん時にね、突然六歳上の兄貴ができたんだよ。
それが椎名。
麗の兄貴が唯くんていうんだけど。これがまあ賢くて優しくて、いじめてくる奴らから守ってくれて、本当に格好よくてさ。ずっと羨ましかった。
兄貴ってそーいうもんだと思ってたから、椎名と初めて会ったときは嬉しくて堪んなくて。にっこにこで言ったの。『お兄ちゃん!』て。
そしたら椎名、俺の横っ面ぶん殴ったよ。
「お前なんか大嫌いだよ」
毎日そう言われて殴られて蹴られて鼻血吹き出して。そうでない日は無視されて。
雪の日に外連れ出されて置き去りにされた時は喘息の発作出ちゃって、本気で死にかけたこともあった。
子供の頃の六歳差はでかい。
体格も知能も差ありすぎて、何やっても敵わねーの。
怖くても痛くても苦しくても、抵抗出来なかった。
父親は会社と愛人の家に入り浸り。たまに帰ったと思ったら女房子供に当たり散らすだけ。
深窓の令嬢だった母親がそんな男に逆らえるわけなく、泣いて塞ぎ込むだけ。長生きしなかった。
朝比奈さんはね、優しかったよ。
怪我の手当てもしてくれた。でも椎名に言いくるめられて、暴力には気付けなかった。
椎名が全寮制の中学入って家出るまでの一年間。
地獄だったよ。気付いたときには俺、痛みなんか感じなくなってたから。
そのうえ椎名、帰省の度に女連れ込んでね。クローゼットに俺閉じ込めてわざわざ同じ部屋でセックスするの。
それが気持ち悪くて仕方なくてさ。でも見てないと後で殴られる。だから泣きながら見てた。俺がそーゆーこと好きじゃないのも、多分これが原因だろうね。
家がそんなだったから、学校は好きだった。だから教師を目指そうと思った。
でも経営にも興味があった。組織を動かしてみたい。幸か不幸か俺には地盤がある。曾爺さんが立ち上げ、爺さんが繋いで、親父がここまでにした会社。
じゃ俺は何処までできるか?イチから始めるより恵まれてる分、ハードルも高い。面白い。やってみたい。その為の基礎を学びたい。これは有栖川の血だね。最終的にこっちの思いが勝った。
そんな時出会ったんだよ。幸に。

