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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】

幸は同い年で、…写真じゃ分かんなかったと思うけど、デカくて感情豊かで…まぁぶっちゃけ変わりもんな女だったんだよ。
でも、将来起業したいって目標と信念持ってて。努力を惜しまない芯の強さもあった。
アホで天真爛漫でとにかくよく笑ってさ、一緒にいるだけで名前の通り幸せな気分にさせてくれたんだよ。
他人に触れて触れられて、嫌悪感なく受け入れられたのは幸が初めてだった。だから。
修了して、入社して、経験積んで、自分の足で立てるようになったら、求婚しよう。そう決めてた。
ところがだ。幸も俺も24の時だった。
幸に重病が見つかったんだよ。
若いから進行も凄まじく早くて、受診した時には即入院からの余命宣告。
でも幸はいつ会ってもいつも笑顔で。それ見る度にほっとしてた。…でも着実に、体は蝕まれていって。
俺は言ったよ。「結婚しよう」って。
そしたら俺は金出せるし、もっと良い病院にも移れる、何なら海外にも行ける、って。
いつか『その時』を迎えても
同じ場所で眠れるから、って。
全部断られた。負担になりたくない、ごめんねって。
その時初めて泣き顔を見た。それでも最後には「流星、大好きだよ」って、笑顔を見せてくれたんだ。
幸は母子家庭。お母さんにも頭下げたよ。
幸を下さいって。駄目だった。何でかわかる?
幸の実家は小さな工務店だったのね。幸のお父さんが一代で築いた、血と涙と努力の結晶。
その顧客と取引先、親父の指示で全部うちが奪ってた。
最終的に店は数千万の負債抱えて潰れた。
──幸のお父さん、首吊ってたんだよ。
幸は遅くにできた子で、一人娘。その時はまだ小学生だった。
規定期間内の自殺だったから死亡保険金はゼロ。負債は自己破産。それからはお母さんが女手ひとつで、血を吐く思いで幸を育て上げ、大学までやったんだ。
叫ばれたよ。うちの人が死んだのはあんたの父親のせいだ、殺したんだ。その上娘まで奪ってくのか。あの野郎の息子に、幸をやれるかって。
父に代わってお詫びします、申し訳ありませんでした。治療費だけでも出させて下さいって、床に頭擦り付けたけど。
あんたはあの頃のあの男そっくりだ、顔見るだけで虫酸が走る。今まで何とか堪えてたが限界だ。もう来るな、って一蹴された。
それから、幸の病室に入れてもらえなくなってね。
そうこうしてるうちに──…

