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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】

最後に会ったのは霊安室。──ま、無理矢理押し入ったんだけど。

横になった胸の上で、固く結ばれた手に触れたのがやっと。顔は白い布被されて見れなかったし、すぐ追い出された。あの時の幸の手の冷たさ、今も覚えてる。

通夜は門前払い。幸の友人て事にして、葬儀だけは麗に参列してもらった。後で言われたよ。


「彼女、眠ってるみたいだったよ」って。


それ聞いて泣いた。
よかった。幸の最期は安らかだったんだ。

幸と約束してたんだよ。『最期までそばにいる』って。幸の最初で最後のわがまま。叶えてやれなかったけどね。
幸の墓の場所は今もわからない。



それからほんと、すぐだった。
今度は親父が倒れた。

横たわる親父のすぐ隣。幸のお母さんがいた。
俺には『視えた』。
すぐ察したよ。ああ、お母さん、自分で絶ったんだって。俺達がそうさせたんだって。

その上でなお縛り付けてしまってる。俺達への憎悪という形で。あんな殺意に満ちた顔させて。
絶望したよ。何処まで不幸にさせてしまうんだ、って。


俺はそこで椎名に言ったんだ。
もう解放されたかったから。

維持装置切ろう。親父も俺らも楽になろうって。
こんな状態で生かしといて何になるんだって。
でも椎名は頑として譲らなかった。


「お父さんはこのままだよ。いいね、流星」


──俺ね、今も椎名が怖いよ。

見据えられただけで体が硬直する。
逆らえない。

それだけじゃねーの。

例えばさっきみたいにさ、椎名が頭の後ろで手組もうとして、ちょっと腕上げるだろ?そんなのにすら反応しちゃうんだよ。殴られる!嫌だ!怖い!って。

もうそんな事ねーのにな。

むしろいくらでもやり返せるのに絶対出来ない。
今でも俺はちっぽけで弱いあの頃のままなんだよ。
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