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第44章 【彼の根底にあるもの。2】

｢──…っ｣

言う通りにすれば、彼は必ず『ご褒美』をくれる。
わたしが望んだ通りのものを。甘くて美味しくて…大好きなものを。

何よりわたしは｢なんでもする｣と言ってしまった。…わかってる。わかっているんだけど…意識させられてしまったら無性に恥ずかしくなって。無言で俯いた。

｢どうしたの？｣
｢……｣
｢いらないの？｣
｢ちが…｣

顔を上げれば、与えられたのは米噛みへの触れるキス。
そして──耳の傍での囁き。

｢…あのね、未結のそういうところも大好きだよ｣
｢…？｣
｢そうやって振り回してくれるところ｣
｢？！ふ、振り回してなんか…っ｣
｢堕とせたと思ったら全然、なんて事ばっかりだもん｣

楽しいけどね。と。その声の直後に唇が重なった。後頭部に手を添えられて、さっきより上向かされて。僅かにだけど彼も身を乗り出してきたことでより『押さえ込まれた』感が増して。目を閉じれば胸の奥と──お腹の奥が締め付けられる。そこで気付いた。

わたしきっと、この格好でのキスが好きなんだ。
少し苦しいけど、その分甘さも気持ち良さもぐっと増すから。
麗さまにはそれが見抜かれていたのかな…

｢口開けて｣
｢あ…｣

命じる声が耳に入って。反射的に開いたのは目だった。

言う通りにすれば、彼は必ず『ご褒美』をくれる。
甘くて美味しくて、大好きなもの。…わかってる。

ほら、口元の強ばりが消えた。生まれた半開きの隙間を滑り抜け、熱く滑らかな舌先が入り込んで。それは当たり前のようにわたしの舌に絡み付き、愛撫し…頭の芯を痺れさせていく。

｢ふあっ…、は…ぅ、んんっ…｣

我に帰った時にはさっきの光景の再現。──ううん、さっき以上の痴態を晒していた。彼の首に両腕を回し撓垂れ掛かるように抱きついて…自分から舌を絡めていた。快感を貪るように。甘ったるい声と、ぴちゃん、ぴちゃんと恥ずかしい音を響かせて。

｢未結｣

つ…と細く唾液の糸を引きながら彼は離れた。…そして改めて尋ねてきたのだった。

｢キス、したい？｣

もはや抗う意思も、羞恥心もなかった。

｢…たぃ…、きす…したぃ…っ｣
｢誰と、したい？｣
｢れ…と……れぃと、したぃ…｣
｢いい子だね｣

そう。『言わない』なら『言わせる』。それが麗だ。