この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
BeLoved.
第44章 【彼の根底にあるもの。2】

ドアを閉めてしまえば、そこはふたりの世界。
見慣れた自室も一瞬で別世界に変えてしまう。
「…あ…」
すとん、と落とされた先はベッド縁。腰かける格好にされたわたしの正面の床に、彼は両膝を着いた。
掛けていた眼鏡を外し、無造作に床に置いて。
押し倒されるのかと思いきや。そのまま両手を回され、そっと抱きしめられた。…ううん、どちらかというと『抱きついてきた』の方が正しいかもしれない。胸に頬を寄せて──そう…まるで、甘えるみたく。
「……」
ちょっと驚きはしたけれど──嫌じゃない。
触れ合う柔らかさとぬくもりが心地いいし、なにより…眼下に垣間見える無防備な表情が、愛おしかった。
気付いたら指が髪を梳いて…頭を撫でていた。ゆっくり、ゆっくり、慈しむように。そう、いつも彼がしてくれるみたいに。
さすがに嫌がられるかな…と危惧したけど。振り払うことなく受け入れてくれた。
心地いいと思ってくれている?それとも…
『わたし』だから身を委ねてくれている?
『大好きなんだから』
今しがた告げられた言葉は、胸の奥底に燻る傲りと優越感を増長させてくれる。
彼にこんなことができるのは、わたしだけで。
彼にこんなことが赦されるのはわたしだけと。
…この生活を始めたばかりの頃には考えられなかった。この一年でわたしは、人がどれだけ変われるものか。どれだけの面を持っているのか。本当に思い知った。
一番変わったのも、一番色んな面を持っていたのも、他でもない、わたし自身だってことも。
「──、未結」
「っ!はい…っ」
「ごめんね、浸ってた」
「あ…」
自分の世界に入り込んでしまったわたしを引き戻した彼は。苦笑混じりに言いながら身を離した。
そして上半身だけ裸になると、徐に顔を寄せて──キスをしてくれた。唇と唇が触れるだけの、優しいキスを。
それでも充分気持ちよくて…もっとくっつきたくて。わたしは両腕を彼の首に回した。そしてそのまま揃ってシーツに倒れ込んだのだった。

