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ひととせの自由
第3章 郷に入っては俺に従え
田中トゥエルヴ。通称『田中くん』。
聞いたところによるとこの人、私より若い21歳。
お母さんはF国人で、お父さんは日本人(ただし顔も知らないそうだ。複雑っぽいので聞かな…いや聞けなかった)とのことで、外見は前言通り、とても整っている。
しかし、、、鋭すぎる目付きと纏っている雰囲気のせいで、おっかなさの方が勝っちゃってる。
その上この人、こんな見ためなのに……料理上手なんだ。
「…今日はうどんにしました。スミマセン、手抜きで」
「ぃやそんな滅相も無い?!大変結構ですッ!!」
居間で頂くお昼ご飯は、ほぼ毎日この人の手料理。
ていうか、朝も晩もこの人が作ったものを食べている。
今日も今日とて正座して、いただきます。
麺を啜りながらつくづく思うのである。
世の中には、仕事以外で料理をする男もいるんだよなぁ…もはや都市伝説だと思ってたよ。
うちの親父も亡きじーちゃんも台所になんぞ絶対立たなかったし、彼氏も、私が熱出したってふっつーに「飯なに?」と抜かしてたから。
…あ、このうどんお出汁が効いてておいしい…
更に田中くん、料理だけでなく…家事全般がお得意。
すこやかパンダクリニック。建物はボロくても埃ひとつ落ちていないのは、この人が毎日きっちり掃除してくれてるおかげだ。
それもこれも、仕事で不在がちだったお母さんに代わり、子供の頃から家のことを引き受けていた。下に妹がいて、ご飯を食べさせてやらなければならなかった…からだそうで。
なにその健気な事情。全く見た目からは想像つかないことばっかりで、もう驚き疲れましたよ…私。