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ひととせの自由
第3章 郷に入っては俺に従え
「田中くーん、お昼なにー」
階段を昇ってくる、かったるそうな足音と、それ以上にかったるそうな声。ここの主、四季先生のおでましだ。
「…お先に頂いてます、先生」
「っ先生私もお先……ぶっは!」
私の背後にある襖が開いた。田中くんに次いで、挨拶しながら振り返った直後。鼻からうどん吹き出しかけた。
先生の脇に綺麗なお姉さんがいたから。
──そしてここで、私の『女の勘』が働いた(いらん)。
四季先生はさっぱりすっきりされた表情。
お姉さんは長い巻き髪を若干乱し、お肌はぴちぴちなのに、どこか疲れてる。なにより、ばっさばさの睫毛(つけまだろうけどね、きっと…)に囲われた瞳は熱く潤んでらっしゃる。
…アナタ方、『致した』後ですね…
ていうか、お姉さんがスッケスケのセクシィ過ぎるランジェリー姿でいる時点で、バレバレなんだけどね。
──いやいやいやいや、この先生、また診療所に女の人連れ込んだの?なんなの、もう…。
あっ、まさかお姉さんとのラブタイムを楽しむために、私をさっさとお昼休みに入れさせたんじゃ……うん、絶対そうだ。絶対そうだ。
「今日はうどんです、先生」
こんなことにはもう慣れっこなのだろう、田中くんはフッツーにうどんの器を机に置いた。
「ありがと。”続き”してから食べるねー」
「…承知しました」
にこ、と笑顔(意外にも可愛らしくて胸キュン…なんてしてない、断じてしてない…多分)の四季先生は、お姉さんの腰に回していた手を引き寄せ、彼女の頬にキスをした。すっごく楽しそうに。
…『続き』って、なに。まさか、第2回戦てこと?いやもしかしたら第3、第4かも…ああ、ありそうで怖い。
くるりと振り返り、自室へとお姉さんと共に入っていく先生。それがここから見える位置ってのがしんどい。
うへぇ…とその背を眺めていたら、何故かここで田中くんも立ち上がった。
どしたんだろ。彼、まだうどんに手を付けてないのに。
やり残した事務仕事でもあるのかな…
果たしてそれは外れた(女の勘、終了のお知らせ)。
歩き出した彼は……四季先生のお部屋に入っていった!!
「ちょっ…田中く…?!」
何やってんの?!部屋間違えた?──しかし、慌てふためいてたのは私だけ。部屋の中から、先生ののーんびりした悪魔の声がした。
「ひととせちゃんもおいでー」