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第10章 10
「完全に 俺だけのものにしたかった。
 何度もそれを望んだ。 でも一度も、至ったことは無い。
 出来なかった。
 それは許されない行為だったからな。
 決して・・・許されはしなかった。

 虫も殺さないような 優しい気性で そのくせに
 涙など一度も見せたことのない 誇り高い女だった。


 だが、お前なら出来る。

 同じ顔、同じ姿をしていても、お前は姉では無いのだからな」



男の放った言葉の刃が、冷たく胸に突き刺さる。



「ひどい・・・・・・ひどい」



 音も無く 崩れる心は ぽろぽろと
その片鱗を露に代えて 瞳の端から零れ落ちる。


乾けば跡さえ 残らない。
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