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Secret space
第2章 2
 父の経営する町工場はとても小さくて、従業員は父も入れて四人。
腕はそれなりに評判らしく、
数多くの企業からの機械部品の注文に、工場をフル稼働させても追いつかず、
土日の休日無しで、引っ切り無しに働き続けているときもあった。

 しかし、ここのところずっと続いている不況のせいか、
企業からの発注は激減し、あれほど動いていた工場の機械たちも
今では一台動かしているだけでもいい状況だった。

元から口数の少なかった父は余計に無口になり、
かわりに酒の量は増えていった。
工場の経営がもう危ないことも、
積み重なった借金の額が、膨大な量になっていることも
紗織はそれとなく知っていた。

親戚から、工場を売り払えと言う意見が出たが
父は決して首を縦には振らなかった。
少しでも家計を助けるためパートに出た母の代わりに
紗織は大好きな部活をやめて、帰宅の時間を早め、家事を手伝った。
「今さえ乗り越えれば何とかなるから」 と
家族で互いに励ましあい、今まで過ごしてきたのだ。

 だから今日、学校の帰り道に会った、古株の従業員が、
父がどこからか商品の発注を大量に引き受けたことと、
だから明日からは忙しくなるぞ、と喜びで興奮気味に話すのを聞いて、
紗織も居ても立ってもいられないほど嬉しかった。
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