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Secret space
第2章 2
 しかし、いざ家に帰り着くと
両親はいつもに増して、暗く、無口だった。
私を驚かすつもりなのかしら と不思議に思いながら、
夕食と風呂を済ませ、二階の自分の部屋で過ごしていると
母から呼び声がかかった。

そうら来た! 喜んで一階への階段を駆け降りた。
でも両親の様子は相変わらずだった。

『玄関に迎えにきている車に乗って、
 あるところに使いに行ってきて欲しいの――』

これ以上にない優しい声で、母が言うのだった。
いったい、何をしてくればいいの と問う紗織に、
台所の母は炊事場の洗い物のほうに目をやりながら、静かに言った。
『ただ行って、相手側の話を聞いてくるだけでいいから』 と。

きっと例の工場の仕事のことだと思った。
工場の事には決して手を出させない両親がそういう用事を頼むのは
珍しいなと思ったが、仕事を手伝える喜びのほうが大きかった。

 でも今――――
父が一日ずっと背中しか見せなかった理由が、
行けといった母が決して自分と目を合わそうとしなかった理由が
はっきりとわかった。
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