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女喰い
第7章 助け舟
弥八郎は自分の中で葛藤していた。
彦兵衛の薄汚いやりようにはつくづく憤慨する。
それに、今回お美代を助けたとしても、彦兵衛はこの先も下女を慰みものにするだろう。
五作にまで酷い怪我を負わせ、江衛門が言うように最早人ではなく、己の欲を満たすだけの鬼なのかもしれない。

あんな男はいない方が世のためだ。
そんな事は重々承知だった。
しかしながら、死に至らしめるとなれば……そこで歯止めがかかる。

「お上か……、拙者は元そっち側だったからな、今でも付き合いがある奴もいる、いざとなれば口をきいてやるが、それにしても……親子と言うのは因果なものだな」

江衛門はため息混じりに言った。

「あ、あの……わたし、五作さんに会いたい」

お美代は2人の会話を聞く余裕はなく、思い詰めたように思いを口にする。

「ああ、気持ちはわかるんだが、会わねぇ方がいい、五作はな、生まれつきのアレで働き口がなくてな、親は困ってた、で、うちの親父が拾ったらしいが……安い給金で雇えるからだ、なのにこんな事になって、多分親父は五作がなにかとんでもねー失敗をやらかして、それで罰を与えたと適当な事を言ってる筈だ、親はガックリきてるだろうよ、五作自身もだ、お美代ちゃんが行ったところでどうにもならねー」

弥八郎は会いに行く事に反対だった。
五作は歩く事ができなくなっているし、五作の両親は、この先体の自由がきかなくなった息子を養わねばならない。
救いのない状況だ。

「でも……わたし、謝りたい」

謝ってどうにかなるものではなく、既に取り返しがつかないが、それでもお美代は五作に会いたかった。

「弥八郎、会わせてやろう、好きあった仲なんだ、五作だって会いたかろう」

江衛門はお美代の気持ちを考え、弥八郎に会わせてやるように促した。

「うーん……、そりゃ俺だって」

弥八郎はいつかお美代と五作が逢い引きしていたのを思い出した。
それを思うと……江衛門が言うように、このまま会わずにいるのは酷な気がしてきた。

「どうしてもダメか?」

江衛門はもう一度聞いた。





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