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きれいなお城の穢れた話。
第1章

─世の中は何が起きるか分からないものだ─


昔から父さんがよく言っていた。それを私が身を以て証明するとは思わなかったけれど。

──ええ、本当にそうよ、父さん。私なんかの小さい世界じゃ計り知れないことばかりだわ。

『もう要らない』そんな理由で、こんな簡単に人間の命を奪える人間がいるんだもの。

「王族とヤれたなんて幸運だったな、カノ」

ああ、首筋はこんなにあたたかいのに、指先と心はどんどん冷たくなっていく。



「──オイ!」

王子がドアに向かい声を張り上げた直後、何人かの足音が響いた。…ああ、部屋の外には使用人達が待機していたんだ。こうなることがわかっていたから。

──ああ、そうか…王子に犯され、殺される。それが私に与えられた“仕事“だったのだ。



「“それ”、片しとけ」

涙が一筋、頬を伝い流れ落ちた。
私の一生は何だったのだろうか。


私は私を殺したこの男の顔と名を、失われていく光と…魂に、しっかりと焼き付ける事に残された時間の全てを捧げた。
永遠に忘れぬ為に。永遠に恨み続ける為に。
私を殺したこの男…マキアート王子のことを。


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