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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第26章 大浴場①
 彼が言うには、ここの前を通った時、たまたまアンジェラが大浴場で花を浮かべているのを見たのだという。
 湯を見ていると、湯浴みの時間ではなかったが、気晴らしに入りたくなったらしい。

 まさかフィーネのために用意されていたとは思わなかったと、悪びれもなく言葉を締めくくった。

「でも理由など、今更どうでもいい」

 そう言ってフィーネへ向けられる視線が、情欲の混じったものへと変わる。水で濡れた顔から、タオルに巻かれた身体にかけて、何度も視線が行き来した。

 お湯で濡れたタオルは、フィーネの身体に張り付き、身体の線を生々しく浮き立たせている。

 胸の突起が薄っすら浮き出ているのに気づき、フィーネは慌てて胸元のタオルを強く握った。

 彼にこんな痴態を見られたと思うと、鼓動が速くなる。

 温泉の熱からくるものではない、不自然な動悸によって呼吸が乱れるのを、何とか堪えていた。
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