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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第32章 女神と魔王①
 危うい状況に陥るたび、

「フィーネが大怪我をしてからでは遅い。移動が必要であれば、こちらで手配をすれば……」

「それでは、フィーネ様のためになりません!」

 と言う会話を、隠れて何度もアンジェラと繰り返していたのをフィーネは知っている。

 主人に心配をかけるのは本意でなかったが、フィーネもアンジェラと同じ考えだった。

(少しでも、自分で出来ることを増やしたい)

 そして主の役に立ちたい。
 
 だから、何度も何度もアンジェラに隠れて訓練を止めるよう説得してくる魔王に対し、フィーネも訓練を続けたいと訴え続けた。

 最終的に、

「馬を上手に乗りこなし、あなた様と一緒に走りたいのです。だから、もう少しだけ訓練をさせて頂けないでしょうか?」

 とお願いして、何とか彼を納得させたのだ。
 
 彼女の言葉を聞いた主の頬に朱がさした気がしたが、気のせいだろう。

 納得しつつも変わらない主人の心配をよそに、フィーネの乗馬技術はめきめき上達した。
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